Crane
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ツルのまち


 優雅に空を舞う美しい渡り鳥ツル

 毎年10月下旬ともなると出水市荒埼の田園の上空には遠くはシベリアから渡ってきたツルたちが その優美な舞姿をみせてくれます。昔話や伝記に登場するツルは日本人に最も愛される鳥ではないでしょうか。 国境のない渡り鳥は一定の期間だけこの出水に滞在します。暖かい冬を出水で過ごすために渡ってきたツルの姿は 三月上旬頃までみることができます。日本でツルが渡来するのは三ヶ所だけで出水のツルはその数も種類も最も多く ツルの渡来地として全国はもちろん海外でも知られています。まさに出水のシンボルです。

ツルの像

 町を歩けばツルに出会えます。

 出水でツルに出会えるのはなにも冬の間だけではありません。町を歩けば一年中いつでもツルに出会うことができます。 (といっても、生きている本物ではありませんが・・・)出水の人々にとってツルはまさに地域の象徴として存在します。 「出水といえばツル」「ツルといえば出水」なのです。出水では店名などの一部に鶴の字が使われたり、ポスターや建物に 鶴の姿が描かれたり、商品名や定食の呼び名に鶴(ツル)の字が登場します。貴方も町でツルを見つけてください。



 1万羽が舞い降りるカントリー

ツルの写真

 昭和27年出水のツルは国定天然記念物に指定されました。江戸時代の元禄年間の頃から毎年渡来し続けている 出水のツルは現在では毎冬約1万羽が渡来します。荒崎の田園地区を主として近辺の田園地帯にもその姿を見ることが できます。飛鳥としては大型の部類であるツルが1万羽も舞い降りる平野を持つ出水は日本の国土事情のなかでは極めて 貴重な地域ではないでしょうか。ツルがその良さを知っているカントリーです。

 日本では世界のツル類の全15種類のうち7種が確認されています。
この数字は中国の9種に次いで、ロシアの7種に並び世界で2番目に多い種数です。
出水では、このうちタンチョウを除く6種の飛来が記録されています。



干拓地のツル

干拓地のツル

 出水の干拓は江戸時代の初期からつぎつぎに拡げられ、現在では1000ヘクタールを越す水田を造っています。もともと出水の海岸は有明海の南端に位置し、遠浅で干満の差が大きく、北西の恒風が吹いて干拓の適地でした。近世初期には出水の海岸の湿地帯各所にツルは渡来していたようですが、海岸の開発が進むにつれ、だんだんと渡来地が限られてきました。

 荒崎田圃は江戸中期の干拓地でしたが、干拓堤防を破損したまま、約100年間幕末まで放置されていました。 そうした理由から、荒崎はツルの渡来地として最適な環境を残していました。明治になると壊れた堤防が修築され、昭和20年代の頃には更にその外側に干拓堤防が築かれました。その後は行政や住民の手厚い保護を受けて今や1万羽に達するツルが出水で見られるようになりました。


ツルについて

 出水平野に渡来するツルはナベヅルとマナヅルがそのほとんどを占めます。

 マナヅルは全長が約1.2m、目のまわりが赤いのが特徴です。体色は首筋の後部が白く他は青みがかった灰色です。

 ナベヅルは全長が約0.9mとツルとしては小型の部類で、体色は首の上半分が白く黒っぽい色をしています。

 他には少数ではありますが、クロヅルナベクロヅル、まれにカナダヅルアネハヅルソデグロヅルなどがまぎれこんでいます。

ツルの飛来状況
年度総数ナベヅルマナヅルクロヅルカナダヅルアネハヅルナベクロヅルその他
平成7年8,6047,5131,085
7,9555,7472,201
10,4697,2313,232
1010,4487,9042,535 
1111,6188,5113,093
1213,52110,8552,655
1311,8458,2733,555
1411,2378,4902,737
1511,4778,5202,942
1611,8399,4322,397



※ 最新のツル情報は、トップページの「最新のツル情報」をご覧下さい。

 日本に見ることができるツルは全部で次の7種類です。
タンチョウ (Grus japonensis)
マナヅル (Grus vipio)
ナベヅル (Grus monacha)
クロヅル (Grus grus)
カナダヅル (Grus canadensis)
ソデグロヅル (Grus leucogeranus)
アネハヅル (Anthropoides virgo)
(ナベクロヅルはナベヅルとクロヅルの雑種です)


 ツルの群れ


 ナベヅルやマナヅルは一家族が両親と幼鳥が1羽か2羽という構成が多いようです。群れはそれらの家族がいくつか集まって つくられますが、群れの大きさは大小さまざまです。


 餌

 ツルは雑食性の鳥で、麦や米などの穀物や植物の根や茎、魚や昆虫、ミミズなどの小動物も食べます。 荒崎では毎日、人々の手によってツルの餌として小麦がまかれます。それでも年々増えるツルの数に餌がたりず、付近の農作物に 被害を与えています。


 鹿児島県のツル保護会

 鹿児島県のツル保護会ではツルの餌代や餌場の土地借り上げ、畑の防護対策などの費用を出していますが、農作物への被害は避けられず 長年の問題として考えられてきました。
出水のツルは国定の特別天然記念物ですが、世界の国々と「渡り鳥保護条約」を結んでいる日本としては、ツルの保護と問題の解決に、さらなる努力が望まれるところです。


 越夏地

 ナベヅルの越夏地は繁殖鳥とそうでない鳥とでは異なるようです。繁殖地は中央シベリア付近で、 非繁殖鳥はロシア南部および中国北東部の国境付近で夏を過ごすといわれます。
 マナヅルについてはモンゴル北東部とロシアとの国境付近および中国北東部の国境付近が越夏地で、そこが繁殖地となります。


 繁殖

 ナベツルとマナヅルはともに春に卵を産み落とし、一度に生む卵はふつうは2個といわれます。 卵は約一月程でふ化して、約70日から80日程で飛べるようになるといわれます。
ひな鳥は生まれてから十ヶ月程は親とくらすため、出水に飛来した家族単位中のひな鳥は、この春に生まれたものです。


 旅立ち

 二月、旅立ちの時期が近づくとツルたちに冷凍のイワシが贈られます。そして、力をたくわえたツルたちの長い旅がはじまります。
好天の中、上昇気流にのって舞い上がったツルの群れの第一陣は上空をゆっくりと旋回して天草の方向、北北西へと飛んでゆきます。
そして、それにつづく第二陣、第三陣・・・ やがて、すべてのツルたちが、それぞれの越夏地をめざして旅立ってゆきます。



今後の課題

 保護対策の弊害

 ツル保護のためと農作物への被害対策として人間の手によって餌を与えることで餌離れができず、 居残りをするツルが多くなっていることが最近問題となっています。 平成12年の3月20日の時点では全体の約6割が飛び立つことをせず”ツルの半野生化”がすすんでいるのではないかという問題が指摘されました。ツルの保護と農作物への被害対策とあわせた問題として、今後の課題になるでしょう。


 九州西周り自動車道の建設

 出水平野に整備する南九州西回り自動車道が、ツルの生態にどのような影響を与えるのかを 調べるツル検討委員会の調査概要が報告されたということです。
 調査は平成12年1月から2月にかけて実施されました。飛行経路、分布、行動、交通車両の影響の4点が調査され、このうち交通車両の影響については約50m離れたところで車が走るとツルが飛び立ったり、歩き去る傾向が見られることなどがわかりました。飛行経路調査では、周辺の構造物の存在は経路にほとんど影響を与えていないとの結果でした。
また、現地調査は平成12年11月から平成13年2月にかけて再度行われました。その結果、「設置物がツルの飛行経路、飛行高度に影響を与えているとは考えにくく、道路の建設がツルに著しく影響を与えるとは考えにくい」と発表されました。


日本のツル
日本で見られるツル
タンチョウ
(Grus japonensis)
北海道頭部や中国東北部、アムール川、ウスリー川流域で繁殖する。 北海道の個体群は留鳥であるが、大陸の個体群は朝鮮半島や中国南部に南下して越冬する
北海道が平成13年1月に行った生息状況調査で、過去最高の飛来数798羽を記録した。
結果は成鳥708羽、幼鳥79羽、不明11羽を観察し、繁殖状況は幼鳥の割合から例年並としている
マナヅル
(Grus vipio)
大形のツルで繁殖地はシベリア南東部、モンゴル北東部、中国東北部で、越冬地は中国ポーヤン湖・長江下流域、朝鮮半島、日本である。主なマナヅルは出水平野で越冬し、個体数はナベヅルに次いで多い
ナベヅル
(Grus monacha)
小形のツルで繁殖地はシベリア南東部、中国北東部。越冬地は中国長江中・下流域、朝鮮半島、日本である。日本では主なものが出水平野で越冬するが、その他に山口県熊毛町八代、高知県中村市の2か所でも少数が越冬する
クロヅル
(Grus grus)
ナベヅルより少し大きく、繁殖地はヨーロッパから中国北部までの広い地域で、アフリカ北東部、ヨーロッパ南部、インド北部、中国南部で越冬をする。少数ではあるが出水平野へ毎年渡来している
カナダヅル
(Grus canadensis)
北米からキューバにかけて分布し、シベリア北東部でも繁殖する。出水平野でも数羽が越冬する他、年によっては1〜2羽が他の地域に現れることがある。カナダヅルは6亜種に分かれているが、日本に渡来する亜種は6亜種中最も小形
ソデグロヅル
(Grus leucogeranus)
大形のツルでシベリア北東部と北西部に繁殖分布しており、東の個体群は中国のポーヤン湖で越冬をする。西の個体群はカスピ海南岸とインド北部で越冬するが、狩猟の影響で数が減少し、存続が危ぶまれている。日本のツル7種中最も記録が少ないツルである
アネハヅル
(Anthropoides virgo)
ツルの中で最も最小のツル。繁殖地はモロッコ、ヨーロッパ南東部、中央アジア、南シベリアからモンゴル北部で、アフリカ北東部、インド北部、中国で越冬する。日本ではまれな冬鳥。

世界のツル
日本以外に生息するツル
カンムリヅル
(Balearica pavonina)
アフリカ中部に生息するナイジェリアの国鳥。 頭部のカンムリが特徴的で、ほかのツル類とは別の亜科とされ、木の上で休息したり、乾いた所に巣を作るなど、生態的にも異なる点がある。
ホオジロカンムリヅル
(Balearica regulorum)
外見はカンムリヅルに似ているが、羽色が淡い。喉の赤い肉垂と頬が白いのが特徴。アフリカ南部に分布し、カンムリヅル同様に2亜種に分類される。
オグロヅル
(Grus nigricollis)
繁殖はインド北部、中国青海省の高地で、冬はチベット南部やブータン、中国雲南省などに渡る。1年中高原地帯で暮らしており、生態には不明な点が多い。個体数は少ない
アメリカシロヅル
(Grus americana)
大形で北アメリカに分布している。1時期数が減少したが、懸命な保護活動により現在は増えつつある。生息地は主に湿地帯である
オオヅル
(Grus antigone)
ツル類中最大種のうちの1つである。皮膚の裸出部は頸の上部まで達している。分布はパキスタンからインド北部、ネパール、インドシナ半島、オーストラリア北部に主に留鳥としている
オーストラリアヅル
(Grus rubicunda)
オオヅルに似ているがやや小さい。皮膚の裸出部は頭部に限られている。ニューギニア北部、南部、オーストラリア北部、東部に留鳥として分布している。別名はゴウシュウヅル
ホオカザリヅル
(Bugeranus carunculatus)
大形のツルで、特徴は両頬に大きな肉垂が下がっている。アフリカ東部、南部に分布。個体数が近年減少していて、原因としては湿地への依存度がより高いことから人為的な影響を受けやすいため
ハゴロモヅル
(Anthropoides paradicea)
小形のツルで、後頭の形が特徴的。三列風切は非常に長い。アネハヅルとともに、頭部に裸出部がないのが特徴で、アフリカ南部の高原に分布している。南アフリカの国鳥

参考資料

バードウォッチング・マガジン「バーダー」

ツルの音声を聴く為には対応するブラウザと再生用プラグインが必要です
また、音質は端末パソコンやプラグインの再生性能の影響を受けます